本日のテーマは、「不動産の耐震基準」です。
今、資材や人件費が高騰して新築の不動産価格が相当割高になってしまっていることから中古の不動産に目を向ける人も多くなってきた印象ですが、中古の不動産を選ぶ際に1つポイントになるのが耐震基準。
地震大国の日本ならでは、ですよね。
一方で、日々お客様と接している中で、耐震基準について正確に理解している人は多くないな、と感じているので、このあたり、本日は皆さんにもう一歩深い知識を身に付けていただきたいと思います。
目次
・3つの耐震基準の概要
・耐震基準判断を間違えないための確認方法
・本日のまとめ
・3つの耐震基準の概要
まずは耐震基準についておさらいしましょう。
耐震基準というのは地震に対する住宅の安全を確保する基準で、建築物の最低限守らなければならない基準などを定めた「建築基準法」という法律で決められているものなんですね。
そして、この建築基準法は大きな地震など災害を経るたびにその被害状況を検証し、何度も改正されてきているという経緯があります。
住まい(不動産)探しをされる方の多くが、耐震基準のうち、新耐震基準や旧耐震基準の2つについては聞いたことがあると思いますが、 実はもう1つ、2000年基準というものもあるので、全部で3つ、頭に入れておきましょう。
このうち、旧耐震基準の物件については市場価格が安いという事情もあるので、僕のお客様にも「築年・耐震基準にはこだわらないのでお買い得な物件を紹介して欲しい」というニーズをお持ちの方が中にはいらっしゃいますが、安全性に関する懸念や、将来第三者に売却する際の流動性なども考えると、原則、新耐震基準を満たす物件、木造(たとえば中古の戸建)であれば2000年基準を満たす物件を選ぶべきだと思います。
さて、耐震基準の概要についてご理解いただいたところで、次の問題は、検討している物件がどの耐震基準に該当するのか、ということになります。
この点、僕のお客様でよくあるのが、「新耐震基準かどうかは、1981年(6月)以降に建てられたかどうかで見分けるんでしょ?」という認識を持っているケース。
実はこれだとちょっと大雑把で、大きな間違いを犯しかねないんです。
・耐震基準判断を間違えないための確認方法
ここからは、耐震基準判断を間違えないための確認方法を2つのステップに分けて紹介したいと思います。
まず、ステップの1つめは、耐震基準は、建物完成時期ではなく建築確認申請のタイミングで判断する、ということです。
建築確認申請というのは、建築工事を行う前に行政に対して必要書類を提出して建築確認の手続きを申し込むことで、建築確認申請を行ってから実際に建物が建築・完成するまでは当然タイムラグがあります。
一般的に申請してから建築されるまで、マンションは1年~1年半、戸建ては3カ月~6カ月程度の時間がかかるイメージになります。
気に入った中古物件が見つかって、資料を見たら建築年月日に1981年6月以降の日付が記述されているが、果たしてこれでOKなんでしょうか?
皆さんがよくポータルサイトなどで目にする物件情報に記載されているのは、おそらく建物完成時期のため、これで判断してはいけないのです。
新耐震かどうかを建築年月日で判断する場合は、「マンションなら1983年以降、戸建てなら1982年以降に建築されたものかどうか」を目安で考えるのが安全だと思います。
次に、ステップの2つめは、建物の「確認済証」と「検査済証」の有無を確認する。
確認済証は建築確認申請が、検査済証は建物工事の完了検査が、それぞれ無事終わったことを証するものです。
確認済証が存在すれば、そこに建築確認申請のタイミングが記載されているので、これを間違えることもないですし、検査済証が存在すれば、その時点における建築基準法に則った耐震基準を満たす工事が完了していることになります。
逆に言うと、「確認済証」と「検査済証」のいずれか、あるいは両方の存在を確認できない場合、それだけで物件の耐震性に問題があると断定はできませんが、判断できないがゆえに気持ち悪さが残るし、注意する必要はあります。
不動産会社・プロ同士ではこうした物件の取引もよくありますが、ご自身の住まい探しという観点から考えると、避けた方が無難ではあると僕個人的には思いますし、僕はお客様に薦めません。
「確認済証」と「検査済証」の有無については、売買契約前の重要事項説明書上で確認が可能ですが、商談がある程度進んだ段階での検討キャンセルはトラブルの原因にもなりかねないため、なるべく早い段階で確認しておきましょう。
売主、あるいは間に入ってくれる不動産業者経由で売主に確認すればすぐにわかります。
・本日のまとめ
建築基準法に規定される耐震基準は3つあります。
①旧耐震:1981年5月まで
②新耐震:1981年6月以降
③2000年基準:2000年6月以降 ※木造物件のみ
【耐震基準判断を間違えないための確認方法】
ステップ1:耐震基準は、建物完成時期ではなく建築確認申請のタイミングで判断する
ステップ2:建物の「確認済証」と「検査済証」の有無を確認する
(存在を確認できない場合、その物件は避けた方が無難)
ということになります。
1点補足しておくと、建築当時に旧耐震基準(1981年5月以前)で新築された物件であっても、その後、耐震補強工事を実施して、現在では新耐震基準に適合している物件が、実は市場に多く流通しています。
ポータルサイトや物件資料上の築年数だけを見て、「旧耐震の物件ですね」と検討候補から除外してしまう方が多いのですが、きちんと新耐震基準を満たす一方で、築年数の関係からか、物件価格として大いに値ごろ感がある掘り出し物件が存在します。
このあたり、耐震補強工事の有無を不動産業者や売主に確認しつつ、物件探しをされるのも良いかもしれません。
本日は以上となります。
また、何かご相談事項があれば、以下のメールアドレスでいつでもご連絡ください。
mail: manabi-station@rbc-cop.com
参考動画:#31 地震大国日本【2000年基準って?】3つの耐震基準を理解しよう!【教育 × 不動産】 https://www.manabi-station.jp/blog/blogvideo/advisor20-2/